座⾧:宮地 良樹(京都大学名誉教授)・久保 亮治(神戸大学皮膚科教授)
講演1.「在宅光線療法の可能性と期待」
名古屋市立大学大学院医学系研究科 加齢・環境皮膚科学 森田 明理
乾癬、アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、白斑など皮膚科には難治性疾患が多い。光線療法が有効な疾患も多い。病態が明らかになるとともに、生物学的製剤が登場し、その有効性の高さから、生物学的製剤の使用頻度が高くなってきた。一方、国内外で、光線療法の使用頻度が少なくなってきたと言われる。このひとつの大きな理由には、光線療法で効果を十分に上げるには、少なくとも週1回の受診が必要で、可能であれば、週2回の受診が必要であり、患者側にも医療機関側にも大きな負担である。一方、生物学的製剤の有効性は高いが、安全性については十分な留意が必要であり、また、非常に高価である。疾患によっては、皮膚科以外での使用可能でもあることから、皮膚科医にしかできない光線療法が見直されるようになってきた。海外では、在宅光線療法でナローバンドUVB療法を行うことは,臨床試験や実績で,治療効果,安全性については問題ないとされ,外来での照射と較べて,医療経済上のメリットや患者のQOLから考えると有利な点が多い。本年3月に、日本でも在宅光線療法の照射機器の製造承認が認められた。政策的にも在宅医療を進める上では、今後加速度的に仕組みや医療環境を整うようにしなければならない。
講演2.「薬剤性光線過敏と発癌の関係」
神戸大学皮膚科 国定 充
薬剤性光線過敏症においては、ある特定の薬剤の投薬後に主にUVA波長領域紫外線に暴露されると紅斑などの症状を生じる。その機序のひとつである光毒性機序、つまり薬剤存在下で生じた活性酸素で細胞障害を起こすものにおいては、結果としてDNA損傷も起こっているはずで、それが長期間繰り返し起こると遺伝子変異から発癌するリスクも考慮されることになる。最近になり、光毒性光線過敏を起こす薬剤を長期内服することによっての口唇癌発症リスク上昇などが報告され、それらは自前のin vitroの実験でのUVAプラス光毒性薬剤でDNA損傷が上昇することと整合している。さらにボリコナゾールという抗真菌剤は長期投薬を受けることにより紅斑や色素沈着/脱失の変化の他、光線角化症や有棘細胞癌が露光部に多発することが海外・本邦より相次いで報告されている。同剤は活性酸素によるDNA損傷レベルが上昇するとされ、他の考えられる発癌に至るメカニズム等についても解説する。