座⾧:錦織 千佳子 (神戸大名誉教授) ・大磯 直毅 (近畿大学奈良病院教授)
講演1.「ポルフィリン症Up Date」
弘前大学皮膚科 中野 創
遺伝性ポルフィリン症はヘム生合成に関わる9つの酵素の活性異常によって、生体にポルフィリン体が蓄積することによって発症する疾患の一群であり、現在10の病型に分類される。皮膚症状を現す病型は8病型あるが、これらのうち最も多いのが、赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)である。EPPは光線過敏症に加え、肝障害を生じる場合があり、肝不全に至ると予後不良になるため、十分な経過観察が必要である。現在、古典的なEPPの原因遺伝子であるフェロケラターゼ遺伝子(FECH)に加え、他に5’-アミノレブリン酸合成酵素2遺伝子(ALAS2)とCLPX遺伝子(CLPX)が知られている。本邦ではALAS2の変異によるEPPは2家系が知られるが、CLPXの変異によるEPPはまだ報告がない。EPPにおいては近年、貧血の合併がみられることや、ビタミンDの不足が問題になっている。本講演では、EPPの新しい原因遺伝子と合併症について最近の知見を紹介する。
講演2.「膠原病と光線過敏Up Date」
日本赤十字社高槻赤十字病院 古川 福実
膠原病の中で光線過敏が見られる代表的疾患は、ループスエリテマトーデスと皮膚筋炎である。本講演では、ループスエリテマトーデスについて紹介する。血中に抗Ro/SSA抗体陽性群に亜急性皮膚エリテマトーデスと新生児エリテマトーデスがあり、古典的群に全身性エリテマトーデス(SLE)と円板状エリテマトーデスがある。他に、隆起性エリテマトーデスと薬剤性エリテマトーデスがある。SLEにおいてはその分類基準(診断基準)の代表的項目から光線過敏がなくなったが、代表的な臨床症状であることに疑いはない。一般に紫外線は悪玉でありUVBに関連した発症機序についてはDNA-抗DNA抗体、抗体依存性表皮細胞障害、サイトカインの流れがある。最近では獲得免疫と自然免疫のバランス異常に基づく自己免疫的機序によって生ずると理解される。モデルマウスから見ると、自然発症性と実験的誘導性のものがあり、T細胞異常やTLR-7の関与が明らかとなっている。現在検討されている課題は、好中球、NETs、マスト細胞、好塩基球、Type 1 IFN、リンパ流の関与などである。UVA1に目を向ければ善玉の役割があり、、皮疹を含めて全身症状をも改善するという報告があるので、簡単に解説する。