座⾧:上津 直子 (上津クリニック院長)・畑尾 正人 (日本化粧品工業連合会)

一般演題1.「UVA曝露による真皮マトリックス変性への線維芽細胞のミトコンドリア-ER経路の関与」

勝山 雄志

株式会社CIEL

光老化皮膚の真皮線維芽細胞内では、ミトコンドリア(MT)DNAの変異や欠失など、品質低下したMTの存在が観察されている。MTはATPの供給や、小胞体(ER)など他のオルガネラとの相互作用を介して細胞機能の恒常性維持に寄与していることから、MTの品質低下が光老化の進行に関与している可能性が考えられる。MTの品質はMitochondrial ubiquitin ligase(MITOL)により制御されており、老化に伴いMITOLの低下が報告されている。そこで本研究では、UVA曝露線維芽細胞におけるMITOLの変化に注目し、MTの品質低下メカニズムと光老化プロセスへの関与について検証を行った。UVA曝露線維芽細胞では、MTの過剰分裂や細胞内ATP量の減少などMTの品質が低下し、これらは即時的なMITOLの減少により引き起こされた。また、MITOL knock-down線維芽細胞では、ERストレスを起因とするMatrix metalloproteinase-1分泌亢進を誘導した。以上の結果から、UVA曝露による線維芽細胞内MTの品質低下はMITOLの減少が一因であるとともに、MTの品質低下は真皮マトリックスの変性をもたらす可能性が示唆された。

一般演題2. 「光老化皮膚に見られる真皮ECMのカルボニル化は線維芽細胞のコラーゲン線維形成を抑制する」

山脇 裕美子

株式会社CIEL

光老化皮膚では、真皮ECMにカルボニルタンパク質(CP)が蓄積確認されており、この環境に存在する線維芽細胞(NHDF)はカルボニル(CP)化ECMの影響を受けていることが考えられる。そこで、本研究はCP化されたNHDFの足場がNHDFのコラーゲン線維再生に及ぼす影響を明らかにすることを目的として実施した。CP化足場はⅠ型コラーゲンをアクロレインにてCP化したものを用いた。CP化足場上にて培養したNHDFは細胞内活性酸素上昇と細胞内CPの増加、Prostaglandin E₂(PGE₂)の分泌亢進、コラーゲン分子架橋酵素であるLysyl Oxidase(LOX)の発現低下を伴うコラーゲン線維形成の低下を示した。LOXの発現はPGE₂とその受容体によって調節されることが報告されており、NHDFにおいてもPGE2はLOXの発現低下を示し、さらにⅠ型コラーゲン線維形成不全を誘導した。また、CP化足場はNHDFにPGE₂受容体、EP4の発現も亢進させた。これらの結果より、CP化足場はNHDFを高酸化状態に誘導し、PGE₂分泌亢進、さらにその感受性を高めることによりコラーゲン線維形成を阻害する可能性が示唆された。

一般演題3. 「紫外線照射による皮膚障害の指標となる表皮角層中の生理活性物質の検証」

松中 浩

常盤薬品工業株式会社 ノブ事業部 学術部

紫外線による急性障害は炎症反応などによって即時に観察することができる。一方で,長期に渡る反復的な低線量曝露が皮膚へ及ぼす影響は明確には観察できず,慢性障害を早期に認識することは難しい。そこで,紫外線曝露による皮膚への影響を,より早期に,鋭敏に表す指標となり得る表皮角層中の生理活性物質をROC解析(Receiver Operating Characteristic analysis)にて検証した。健常人の露光部(手背)と非露光部(上腕内側部)の表皮角層中のサイトカイン(IL-1α,IL-1ra,IL-10,TNF-α),Bax,TLR3,TLR4の紫外線曝露に対する応答性をROC解析した結果,IL-1ra/IL-1α,TNF-α,Bax,TLR3の応答性が高いことが確認された。次に,光線過敏症患者などでの4週間のサンスクリーン剤使用試験を実施し,使用前でIL-1ra/IL-1α,TNF-α,Baxの有意な減少が認めた。これらのことから,表皮角層中のIL-1ra/IL-1α,TNF-α,Baxは,紫外線曝露による皮膚への影響を鋭敏に表す指標となり得ることが示唆された。

一般演題4. 「ブルーライトによる皮膚の光老化作用」

久保 沙耶香

第一三共ヘルスケア株式会社

肌の光老化の予防にはサンスクリーン剤を主とした紫外線防御が重要であると言われている。特に長波長紫外線のUVAは肌の真皮層まで到達し慢性傷害を引き起こすことで光老化を誘発する。そこで我々はUVAよりも波長の長いブルーライトに着目し、サンスクリーン剤では防御しきれないブルーライトによる肌への影響について評価した。ブルーライトとは太陽光線にも多く含まれる波長380~500 nmほどの青色光線のことであり、可視光線の中では最も波長が短く強いエネルギーをもつことが知られている。また、紫外線より長波長であるため肌の真皮層の奥深くまで到達すると考えられている。本研究ではブルーライトが表皮角化細胞・真皮線維芽細胞だけでなく全身遊走性の好中球にまでも作用し光老化を促進することを明らかにした。今回は好中球を通じた真皮の変化を中心に、ブルーライトの肌の光老化促進作用とそれらに対するトラネキサム酸の抑制的作用についても報告する。

一般演題5. 「環境微粒子付着抑制技術を付与した紫外線防御製剤の開発と肌への効果」

井下 美緒

花王株式会社スキンケア研究所

近年、花粉やPM2.5などに代表される環境微粒子の増加が、日本のみならず、アジア、欧米諸国でも社会問題化している。肌に付着した環境微粒子に紫外線が当たることで、活性酸素の発生を促進し、肌老化を助長するという報告もある。そこで、我々は、紫外線だけでなく、環境微粒子の付着も抑制することが重要だと考え、紫外線防御製剤に環境微粒子付着抑制技術を付与する新たな技術開発に取り組んだ。微粒子の肌への付着に寄与するファン・デル・ワールスカと液架橋力に着目し、肌表面の紫外線防御製剤の塗膜に微細な凹凸形状を作り、表面粗さを一定の範囲に制御することで微粒子の付着を抑制する技術を開発した。また、肌のバリア機能が低下している場合では、より環境微粒子の影響を受けやすいと考えられ、本発表では、環境微粒子の付着抑制技術を応用した紫外線防御製剤の開発とともに、肌が敏感な人に対する本技術の効果についても報告する。

一般演題6. 「色素性乾皮症の遮光指導における窓フィルムの遮光効果の比較」

山野 希

神戸大学 皮膚科

色素性乾皮症(XP)は、紫外線により誘発されるDNA損傷を修復する機能が先天的に欠損した遺伝性疾患であり、遮光がなされていない環境下では10代までに皮膚発癌を呈する。生涯を通じて遮光生活の継続が必須であり、自宅のみならず学校や勤務先においても遮光環境調整への理解と協力が必須である。その際、遮光に用いる日用品の遮光効果を評価する基準が香粧品と布製品にしか存在しないことが問題となる。今回、窓フィルムを中心とするXP患者の日用品の遮光効果をUVB・UVA全領域(280-400nm)で波長ごとに測定し評価したところ、99%紫外線カットと表示された製品でも、特に380-400nmの波長域で透過率に大きなばらつきを認めた。更に、JIS規格を調べると、製品業界ごとに独自に定義された紫外線の波長域を元にして遮光効果を算出していた。皮膚発癌への影響力を示す作用曲線は300nm-UVBに加え380nm-UVAでもピークを認めるため、XP患者には、380-400nmを含む紫外線全波長域を抑制した遮光製品を選択できる基準が必要である。

一般演題7. 「PUVAバス療法による血清タンパク質濃度の変化の網羅的解析;全身性炎症や心臓血管系疾患の病態に関わるタンパク質に着眼して」

金山 佳史

名古屋市立大学大学院医学系研究科 加齢・環境皮膚科学

乾癬は全身性の炎症性皮膚疾患であり、心臓血管系疾患のリスク因子でもあることが知られている。本研究では、2007年から2011年の間に当院で初めてPUVAバス療法を受けた20名の乾癬患者を対象として、炎症や心臓血管系の病態に関わる92個の血清タンパク質濃度を網羅的に測定した。測定はタンパク質定量解析の受託サービス(Olink® Target 96 Cardiovascular II)を利用した。治療後に38個の血清タンパク質濃度が有意に減少した。そこで、有意に減少したタンパク質がどのように働いているかをエンリッチメント解析で調べた。その結果、cytokine-receptor interactionやinflammatory response、脂質・動脈硬化にかかわるタンパク群であった。PUVAバス療法によって全身の炎症を改善するとともに心臓血管系疾患のリスクも低下させる可能性がある。